なんか良いことあれ

見たことや感じたこと

間違えた桜

季節外れの桜が咲いたというニュースを見かけ、一目みてみようと上野公園へ出かけた。

秋も深まってきていて、太陽の位置が低く昼間でも目に痛い。鶯谷駅から上野公園に向かう歩道の端には玉砂利のようにどんぐりが沢山落ちていて、少し歩き辛いくらいだ。

 

上野公園に着いたが、広い公園内のどこの桜が咲いたのかは知らない。あてもなく園内を歩いた。天気の良い週末らしく、老若男女様々な人達が集まってきていた。道端でパフォーマンスをする大道芸人も多く、ところどころで人だかりができて歓声が聞こえる。露天も出ており、軽食や雑貨を売っているようだ。

噴水広場から動物園のゲートを横目に通り過ぎ、京成上野方面へ進む桜並木の途中で、目当ての桜を見つけた。

それは注意して見なければ見過ごしてしまいそうなほど目立たなかった。ほとんど枝だけの木に、5〜6箇所まばらに数輪の花をつけている。

春に見る桜の印象とはまるで違う。近づいて良く見ると確かにきれいな桜の花なのだが、場違いなステージに立っているタレントのように、どこか憐れで痛々しかった。たまに、花に気づいた通行人が物珍しそうに写真を撮るだけで、多くの人は素通りするか、大道芸を見ている。

春に、一斉に咲いている時は皆が喜んで見物に集まる桜も、時期を外れて群れにならなければただの花なのだなと、さみしくなった。